|
第7回ファッションタウン児島国際トライアスロン大会
気温26度、水温28度・・・中尾友一にとって願ってもないスイムコンディションだ。
「なんかホッとしますねえ」・・・スイム前はいつもナーバスになる隊員Aも、今日は中尾からもらったサンドイッチをほおばっている。
「そういえば、ナンバー54の方から『いつもブログを見ています』と挨拶されました」「michiyoさんご一家にも会えてよかったね。ステキな家族だったなあ」などと会話を交わしているうちに、花火があがる。「無駄遣いしているなあ」と追っかけ隊広島支部長が言っている間に、第1WAVEがスタート、3分ごとにそれぞれがスタートしていく。中尾は第4WAVEだ。
「パターン、パタン」という独自のリズムなのでかなり遠くなっても認識できる。「見えなくなったな」と思った直後、それは起こった。
モーターボートに乗せられて選手が1人、スタート地点に運び込まれてきた。動かない。人工呼吸と心臓マッサージが始まった。それでも動かない。
「誰?誰なの?」隊員Aの緊張した声に、双眼鏡を持った広島支部長がじっと状況を見守る。
張りつめた数分が過ぎていく。
「あれ、中尾さんじゃない?」、特徴のある泳ぎが戻ってきた。
「いつも死と隣あわせ」・・・頭ではわかっていてもこの緊張感、そして祈るような気持ちは、中尾を追っかけ始めて以来、かわることがない。
幸い応急処置を受けた選手もことなきをえたとのこと。
手元の時計では40分、公式記録で41:04。去年の39:43には及ばないものの、いいタイムだ。
時間内完走に向けて、中尾はバイクのペダルを元気に踏み込んだ。
バイクも追っかけたい・・だけど、バイクだけは追っかけられない。
よくて折り返し点で様子をチェック、最悪はスタートで見送って、ゴールでただ待つだけとなる。
今回の児島は鷲羽山を2周するため、同じ場所で3回チェックすることができる。
今回のレースの課題はバイク、普通はスイムの遅れを取り戻す勢いだが、児島のコースはタフだ。いつも1時間40分前後でカバーしているが、去年も2時間を越えている。今回もなかなか戻ってこない。
「もしや、パンク?」など、こんな時は悪いことしか思い浮かばない。
ようやく姿が見えた。元気そうだ。笑顔も声もでる。
もう1周・・・後でわかったことだが、かつては飛ばしていた下りで、転倒を用心するあまりスピードが出せなかったようだ。
ランには、余裕を見て1時間半を残したい。が、2周目の周回からなかなか戻ってこない。
「きびいしなあ」・・・誰ともなくつぶやく。
周回地点から車でバイク・ゴールに回っている時間はない。
ラン・コースの最初のエイド「風の道」で中尾を待つ。
ここを2時間50分で通過すれば時間内完走の可能性がでてくる。
遠くから歓声があがり、中尾の姿が見えた。ぎりぎりだ。
風の道の沿道を伴走するが、いいペースだ。腰も落ちていない。このまま、諦めなければいけるかもしれない。
「いい調子ですよ」と声をかける。
中尾が通るところから歓声があがる。
しかし初めのペースは続かなかった。地下道を過ぎて商店街のアーケードに現われた時には、ピッチが落ちストライドが伸びなくなっていた。キロ8分のペースが急速に落ちていく。
隊員に会うたびに「もうだめだ。無理だ」と愚痴もでる。
それでも中尾は決して歩かない。いつもより止まる回数も少ない。内心では絶対に諦めていないのだ。
ラストのコースを他の追っかけ隊隊員に任せてゴールに向かう。
選手たちが家族や友人に囲まれてゴールしてくる。
ぎりぎりまで諦めるものはいない。
そして
制限時間の12:00:00
まだ中尾の姿は見えない。
9分を過ぎた頃、ひときわ大きな歓声があがった。
「完走」という使命を果たした喜びを全身にみなぎらせて、中尾友一がゴールのテープを切る。
公式タイム 4:10:16
今シーズン、もっともタフなコースのレースが終わった。
←レースレポート・メニューに戻る
|